グリンピース闘争3−past story 昴流ー





「きゃあああああああっ!!」
「どうしたんですか、北都ちゃんっ!」
突然の北都の悲鳴に、星史郎が慌てて台所から飛び出してきた。

今日は彼が、星ちゃん特製フルコースをご馳走してくれると言うので、昴流と北都は彼の家で夕飯を頂いていたのだ。ご馳走というだけあって、テーブルの上には色とりどりの料理が並んでいるのだが。

「星ちゃんっ!これ、グリンピースが入ってるじゃないっ!」
「北都ちゃん、グリンピースお嫌いですか?」
「私たち、これだけは駄目なのよ。」
「“たち”ということは昴流君も・・・」
「ちょっと、苦手です・・・」
北都とは違い、昴流は申し訳なさそうに打ち明ける。それにしても、双子というのは食べ物の好みまで似るものなのか。

などと呑気に考えている場合ではない。北都から、お叱りの言葉が飛んできた。
「星ちゃん、恋人の嫌いな食べ物ぐらい調べときなさいっ!」
「はい、すいません。未来の奥さんとお義姉さんの好みも知らないようでは結婚なんて程遠いですね。」
「何の話ですか、何のっ!!」
時々昴流が口を挟まないと、この二人の会話はどんどん先へ進んでいってしまう。と、思っているのは昴流だけで、話はすでに暴走列車状態。今更、昴流ごときが何を言おうと止まることはない。

「しかし、北都ちゃんに好き嫌いがあるとは・・・意外ですね。」
マジメな顔で呟いた星史郎に、北都はさらりと応える
「乙女には敵が多いのよ。」
「敵ですか。例えば?」
「とりあえず、グリンピースでしょ?それに、青春の貴重な時間を奪っていく課題とテスト。不況による物価上昇とリストラの波・・・」
「リストラは関係ないのでは?」
「未来の旦那の心配をしてるのよ。」
北都の夢は団地妻。

「猛スピードで変わっていく流行も、なかなかの強敵ね。」
「え・・・。」
「? 何、昴流?」
「い、いや、別に・・・」
流行なんて完全無視の奇抜なファッションしかしない北都の口から、流行などという言葉が出るとは。少し驚いた昴流だった。

「後は、そうね・・・」
「まだあるんですか?」
星史郎の問いに北都はチラッと上目遣いで視線を送り、
「かわいい弟を奪っていく狼さんってトコかしら。」

「な、何言ってるんだ、北都ちゃんっ!!////」
さすがの昴流でも、こう毎日毎日似たような会話を繰り返されれば、北都の台詞の意味はなんとなく分かる。分かるからこそ、一気に顔が赤くなる。しかし星史郎はそこでやめてはくれない。
「そうですか、僕は敵ですか。」
「星史郎さんっ!!////]
「幸せにしてくれるならいいんだけど。」
「それは・・・どうでしょうねえ。」
なんて冗談のように話しながら意味ありげな視線を交わす二人だが、当の昴流は会話の内容に焦っていて気付かない。

「ところで、昴流君はどうしてグリンピースが嫌いなんですか?」
「それは・・・」
話が元に戻って昴流はほっとした顔を見せる。しかし、少し困ったように、
「グリンピースは、人類の敵だから・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・一体どなたがそんな事を?」
「私よ、私っ!」
北都が元気よく挙手する。
「人類の敵なんですか?」
「私の敵は人類の敵よっ!」
なんて極端な思考回路・・・。

「では、僕も人類の敵ですか。」
「あら、そういうことになるわね。」
「ほ、北都ちゃんっ!」
さっきとは違う意味で慌てる昴流だったが、北都はそんなもの相手にせず、問題のグリンピースが入った皿を星史郎に差し出した。
「ちょうどよかったわ。グリンピースを食べると、洗脳されて人類の敵になっちゃうんだけど、星ちゃんならノープログレムね。これ、ひきとってね。」
「はい、勿論です。昴流君の分も。」
「あ、でも・・・」

躊躇した昴流に、星史郎はにっこりと笑いかける。
「大丈夫ですよ。どこぞの発展途上国とは違って、日本は他国からの食糧であふれ返ってますからね。わざわざ嫌いなものを食べなくても、ちゃんと生きていけます。」
「でも・・・」

昴流が気にしたのは、せっかく星史郎が作ってくれたのに、ということだったのだが、きっと星史郎の事だ。すべて分かっていて、こう言ってくれているのだろう。
「じゃあ・・・お願いします。」
「はい。」

こうして星史郎は、桜塚護として、そして地の龍として、悪い奴度を深めていくのであった。





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