グリンピース闘争2−past story 神威−

                                      




「ん〜〜〜〜〜〜」
「う〜〜〜〜〜〜」
「二人とも、唸ってないでさっさと食べなさい。」

皿の上に寂しく残っているグリンピースとにらめっこしながら唸っているのは神威と小鳥。空いた皿を片付けながら二人をせかしているのは神威の母・斗織だ。台所では、小鳥と封真の母・紗鵺が食器を洗い、それを封真が拭いている。しかし、二人の皿が空かないと片づけが終わらない。

だが、嫌いな食べ物を食べさせられるのは一種の苦行だ。
「おばさあ〜ん(泣)」
「泣いても駄目よ、小鳥ちゃん。」
斗織さんは人の子供にまで厳しい.決して残すことは許さない。

台所に皿を運んでいく斗織の背中を見て、二人はでっかいため息をつく。そしてそのまま同時に視線が庭に向いた。そこには人間の事など見向きもせずに、平和に日の光を浴びている鳩。ついついあの歌が浮かんでしまう。
「ぽっぽっぽ〜、はとぽっぽ〜」
「ま〜めがほしいか・・・」
「やっちゃ駄目よ?」
「・・・はい・・・・・・」

しかし二人の箸は一向に進まない。動いてさえいない。
「お母さ〜ん(泣)」
「残すから食べにくいんでしょ。封真君みたいにご飯と一緒に食べればいいのに。」
「封真はグリンピース嫌いじゃないもん。」

「神威、ちゃんと食べないと封真君みたいに大きくなれないわよ。」
「グリンピース食べなくても大きくなれるもんっ!」
なんて悲しい台詞だろう。未来の神威が聞いたらどれほど後悔することか。

「あのね二人とも、世界にはグリンピースも食べられないかわいそうな子供たちがいっぱいいるのよ。」
「それはむしろ・・・」
「幸せだと思う・・・」
「一日中何も食べられないのよ?」
「ええっ!?」
なんて純粋な子供なんだ・・・。

「かわいそう・・・・・・」
「きっとお腹すいてるね・・・・・・」
「あっ、じゃあこのグリンピース、送ってあげればいいのよっ!」
ズル・・・・・・

純粋すぎて怒れない。
「どうでもいいからさっさと食べなさいっ!」
いや、怒られた。

そして、またにらめっこが始まる。
「ん〜〜〜〜〜〜」
「う〜〜〜〜〜〜」
「睨んでても消えないわよ。」
神威なら消せそうな気がするが。

と、ここで小鳥ちゃんが挙手。
「あのね、おばさんっ」
「今度は何?」
「実はグリンピースは地球征服のために宇宙からやってきた人類の敵なのっ!」
「ええっ!本当にっ!?」

今驚いたのは、言うまでもなく神威だ。どう間違っても斗織ではない。

「それでね、食べると洗脳されて人類の敵になっちゃうのっ!」
「そ、そうだったんだ・・・」
信じてるのか、神威ちゃん・・・・・・。それにしても、子供の想像力は素晴らしい。斗織が感心しつつ呆れ返ったとき、台所から紗鵺の声がした。
「斗織、これ直してくれない?」

斗織は女性としては長身な方だ。紗鵺よりも高いところに手が届く。
紗鵺に呼ばれて斗織が台所に入ると、入れ違いに封真が出て行った。それを見て斗織は小さくため息をつく。
「紗鵺、甘やかすとためにならないわよ。」
「あら、斗織だって、私のところにはグリンピース入れないでくれるのに。」
「・・・・・・・・・・・・。」

斗織も紗鵺には弱いのだ。だから目を瞑ることにする。後ろで、封真が二人分のグリンピースを素早く口に入れているのは分かっているけれど。

「封真君、人類の敵になっちゃうわよ?」
「じゃあ、神威ちゃんと小鳥は正義の味方ね。」
くすくす笑いながら二人はそんな会話を交わす。このときから封真の地の龍への道は始まったのだった。(笑えねえ・・・・・)


       

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