バレンタイン番外編




バレンタインを目前にして開催されたユゥイ先生のバレンタインチョコ特別講座。参加者は女の子がメインになるかと思いきや、四月一日は勿論、サクラたちに誘われたのか、百目鬼や小狼達いつものメンバーも参加してくれた。クリスマスケーキのときは食べ役に回ったファイも、今回は作る側として参加している。完成品を渡す相手のことでも考えて居るのだろう、終始にこやかな表情は、弟から見ても微笑ましい。
それにしても。
「小龍君まで参加してくれるとは思わなかった。」
ユゥイは、溶かしたチョコを真剣に型に流し込んでいる男子生徒に話しかけた。
「バレンタインはオレがあげるよって言ったのに。」
「やっぱりおれも、渡したいなと思って。」
小龍は、手を止めて顔を上げる。
「それに、ユゥイさんと過ごせる機会は、少しでも多い方が良いし。」
そういって微笑まれて、ユゥイは少し頬を赤らめる。彼が作っているチョコ、あて先は自分だと、聞くまでもなく確信している。だって、彼の恋人は、紛れもなく自分自身。
「でも、自分で教えたチョコを貰うのってなんか妙な気分だよ。」
調理実習で作った料理を少し分けてもらうことはあるけれど、こういうものって、当日まで内緒にしておくものじゃないだろうか。
「だって、好きな人には、世界一美味しいチョコをあげたいでしょう?」
「・・・・・・・」
相変わらず、高校生の分際で凄い殺し文句だ。こんなにあっさり真っ赤にされるなんて、彼より約十年も長い自分の人生経験ってなんだったんだろうかと思ってしまう。
(ああ、そうか・・・)
「悪いけど、それは叶わないよ。」
「え?」
「世界一美味しいチョコを貰うのは君だから。」
それを探すために早く生まれたんだと思えば、それはそれで悪くない。

周りの生徒は皆、チョコを型に流し込んだり、デコレーションしたりするのに必死になっている。
ユゥイはそっと身をかがめて、小龍の頬に口付けた。



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小龍はかっこつけて口説き文句言ってもいつも流されるかやり返されて、やっぱりユゥイ先生は大人で敵わないなあと思ってると思うんですけど、ユゥイ先生は恋愛偏差値では完全に負けた気になってて自分が返した言葉が思いのほかダメージでかいことに気づいてないと思う。
お互いが相手の方が上手だと思ってるそんなすれ違いカップル萌。





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