リアリティー
     それは酷く現実味を帯びて

     優しく冷たく僕を苛む



  
夢幻想




「あ・・・・・・っ」
躰の中で最も敏感な部分に触れられて、思わず上げた声は想像以上に甘く。
慌てて口を塞いだ手は、しかし、相手によって退けられた。
「声、出した方が可愛いですよ」
言いながら遠慮なく擦り上げられて。
「ああ・・・・・・っ!」
堪えることも出来ずに、嬌声を上げた。


「・・・・・・ん、昴流さん」
「あ、はい。すみません」
名を呼ばれて、今はおばあさまと話していたのだと我に返る。
「ああ・・・・・・、桜どすか」
おばあさまは僕が目をやっていた方に視線を向け、目を細めた。
「今年も、綺麗に咲きましたな」
「はい」
――――――桜の花は、本当は白いんですよ
あれは、あの黒い服の人は、誰・・・・・・?
「手袋は、人前で取っていませんね?」
不意に声を掛けられて、また飛びそうになっていた意識を現実に戻す。
「はい」
おばあさまは真剣な顔で。
「その手袋は何があっても、絶対に人前で取ってはなりまへんえ。北都さんの前であっても」


「あ・・・・・・、う・・・・・・ん、はあっ・・・・・・」
ゆっくりと扱かれて、熱い吐息が漏れる。
相手がくすりと笑う気配に、閉じていた目を開くと目が合った。
「此処、もうすっかり濡れちゃってますよ。本当に感じ易いんですね」
言葉で嬲られて。
「や・・・・・っ」
そんなことをしても何の意味も成さないと知りながら、顔を背ける。
行動とは裏腹に、僕の其処は喜んでいて。
「嫌じゃないでしょう?ほら、また溢れてきた」
「ち・・・・・・違・・・・・・っ!」
「違いませんよ。・・・・・・聞こえるでしょう?いやらしい音が」
言いながら扱かれて。
先刻迄は気にならなかった濡れた音が、鼓膜を犯す。
「あ・・・・・・っ、や・・・・・・嫌・・・・・・っ、やめ・・・・・・っ!」
「可愛いですよ、昴流君」


桜が風に舞っている。
――――桜の木の下には・・・・・・
桜の木の下には、何があったんだっけ?
「・・・・・・る、すーばーるっ!」
「あ、北都ちゃん・・・・・・」
気がつくと、北都ちゃんが僕の顔を覗き込んでいた。
「どうしたのよ?ぼーっとして」
「いや・・・・・・、何でもないよ、ごめん・・・・・・」
北都ちゃんは少し首を傾げたけれど、気にしないことにしたらしい。
鼻歌を歌いながら、軽快な足取りで僕の前を歩いていく。
強い風が吹いて。
桜の花びらが舞う。
「ね
・・・・・・」
不意に北都ちゃんが足を止める。
「遠くに、行かないでね?」
不安に、揺れた声。
返す言葉が見つからない僕に、振り向いた北都ちゃんは満面の笑みを浮かべていた。


「あ・・・・・・ああ・・・・・・っ、ふっ・・・・・・」
体内を指で掻き回されて、僕は耐える術も知らずに喘ぐ。
二本の指が好き勝手に動いている其処からは、湿った音が響いて。
「もう一本、いけそうですね・・・・・・」
「む・・・・・・、無理・・・・・・っ!」
慌てて否定したら、次の瞬間、敏感な部分を引っ掻かれた。
「あう・・・・・・っ!」
あられもない悲鳴を上げた僕を、相手は満足げに見下ろす。
引き抜かれた二本の指は、
「や・・・・・・、ああ・・・・・・っ!」
三本になって戻ってきた。


その時感じたのは、『仲間』に対する心配や『敵』に対する憎悪ではなく。
嫉妬,だった。
僕は酷く動転していて、
「       」
自分が何を言ったのかすらわからなかったけれど。
多分、ずっと想っていた相手の名を呼んだんだと、思う。
違和感。
誰もいない大通りを一人歩いているような、奇妙な感じ。
貴方は、誰・・・・・・?
「お前の願いを叶えてやろう」
ふと、目の前を桜がよぎる。
――――賭けをしましょう
その言葉の続きを、僕は知っている。
はっと気付くと、神威の左手が僕の右目を潰そうとしていた。


「ふ・・・・・・う・・・・・・っ、く・・・・・・」
理性も恥じらいも流されて、ただ与えられる快楽に身を任す。
「・・・・・・泣くほど気持ちいいですか?」
意外そうな声で言われて。
へぇ、こんな声も出すんだ、と場違いなことを思いながら目を開ける。
少し歪んだ視界に相手の顔が映る。
それにしても、僕が泣いてるって、どういうことだろう?
そんなことを思っていると、指で頬をなぞられて。
その感覚で、自分の頬が濡れていたことを知った。
「・・・・・・」
それは、わかったからといって止められるものではなく。
「あ・・・・・・、うあ・・・・・っ!」
「ねえ・・・・・・、気持ちいい?」
先刻とは変わって、どこか意地悪そうな口調で訊かれた言葉に。
僕は感情と感覚に従って、小さく頷く。
「そ
ろそろ・・・・・・挿入れていいですか?」
僕は、少し途惑ったけれど、頷いた。
初めから選択肢なんて一つしかなかった。
涙が、止まらない。
「息を吐いて」
そんなこと、できそうもなかったけれど、頑張って言われた通り息を吐く。
瞬間。
「あ・・・・・・、あ――――――っ!」
一気に、僕の躰は灼熱の炎に包まれた。


障子越しに聞こえる、声。
「桜の災いがふりかかります」
「・・・・・・それは、やはり桜塚護のことでしょうか・・・・・?」
「そこまでは・・・・・・、でも、その可能性は十分にありますな。・・・・・・とにかく、注意して見ててあげて下さい」
桜の花びらが舞う。
幼いぼくは、二人の言葉の意味を知らない。


「あっ・・・・・・、んん・・・・・・っ」
躰中を濡らして、喘いで。
そんなことは気にならない、どうでもいい。
ただ、目の前の相手が。
「う・・・・・・っく、・・・・・・ああっ、せーし、ろーさ・・・・・・」
一度名前を呼ぶと、何かが堰を切ったように流れ出して。
「星史郎さ・・・・・・んあ・・・・・・っ、星史郎さんっ!」
ずっと、本当は、わかってる。
一際、激しく抉られて。
「ああっ・・・・・・!」
僕の意識は白く塗り潰された。


―――――貴方は、殺す価値もない
好きになってもらえないなら、いっそ殺されたいと思った。
いつか、殺してもいいと思ってもらえるくらいに、強くなりたかった。
崩壊していく橋の上で。
同時に自分も崩壊していくのを、感じた。
認めてもらいたいと思っていた相手を殺して、殺してほしいと思っていた相手を殺して。
その思いだけで僕は立っていたのに。
「・・・貴方はいつも・・・僕が予想したとおりの言葉はくれないんですね・・・」
ずっと好きだった。
北都ちゃんが殺された時も、感じたのは圧倒的な絶望と虚無感だけで、憎悪はなかった。
彼を殺すなんて、考えたこともない。
好かれることがないなら、殺されたかった、のに・・・・・・・。


暗い部屋の中には僕一人。
障子の向こうでは桜と椿が咲いている。
彼の右目を空いた眼窩に入れた時から、ずっと。
頬に触れる。
本当に泣いていたのではないかと思ったけれど、それは錯覚だった。
そういえば、現実に最後に泣いたのは何時だっただろう。


崩れ落ちていく間際に、彼が耳元で言った言葉。
僕は、そんなもの、欲しくなかった。
そんなこと言われても、どうすればいいかわからない。
星史郎さん、貴方は僕に何を望んでいたんですか?
僕は、貴方だけなのに・・・・・・。

「              」




                 


                 ツバサに星史郎さん登場で、星X昴に堕ちた
                 あお様から頂きました。
                 管理人の18歳祝いだそうです。
                 ありがとうございますvv
                 昴流君の星史郎さんを思う気持ちが哀しいです。
                 そして昴流君の周りの人々も・・・。
                 あお様、素敵な作品ありがとうございました。





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