初体験 認めない。あんなのはキスじゃない。 じゃあこの胸のドキドキは・・・? (少女漫画風の書き出しでお届けいたします。) 「恋をしてるわね。」 「誰が誰にだ!!」 「黒鋼君がー、ファイ君に♪」 「そんなわけないだろ!!」 「きゃー、こわーいvv」 言葉とは裏腹に、心底楽しそうに、プリメーラは隣の笙悟に抱きついた。慣れた動作でその肩を抱いて、笙悟は辺りを見回す。 「で、やっとファーストキスを交わした奥さんは何処へ行ったんだよ。」 「あんなもんキスじゃねえ!!」 『奥さん』を否定するのを忘れている。 キス事件の数時間後、今はそれぞれ昼食の時間。いつもは班のメンバーで集まって食べるのだが、ファイが戻ってこない。 「ファイ君、また浜辺でビーチバレーしてたから、まだやってるんじゃないかなー。」 「照れ屋な旦那に捨てられてなー。」 「誰が照れた!!」 『旦那』を否定するのを忘れている。 「照れたじゃねえか。ファイとキスして真っ赤になって。」 「そうそう、可愛かったわよー。初々しくて。」 「違う!!!」 思いっきり否定したが、実は思い当たる節がないわけでもなく。 胸が高鳴るのは、恋という感情に似てはいないか。 (そんなわけねえ!あいつは男だぞ!?) 「別に男同士でも良いと思うけどな。お前ら、今更だし。」 「何が今更だ!」 「気付いてないのは本人達だけってな。」 「ねー。」 「何の話だ!」 まるで、二人はすでに両想いのような話の展開になっている。 黒鋼としてはそんなつもりはない・・・はず。 「だいたい、男同士でつきあっても何の利益もねえじゃねえか。」 「恋愛を損得勘定で見るなよ、寂しい奴だな。」 「そういう意味じゃねえ。」 「分かってるよ。体の話だろ。」 一応、年頃の男の子。やりたい盛りである。 「でも、恋愛は体が全てじゃない。好きになったら抱きたいと思うことはあっても、抱かなきゃ付き合えないわけじゃない。体から入る恋愛もあっても良いとは思うけど、要は気持ちだろ?」 「・・・・・・お前らはどうなんだよ。」 「そういうことはまだだな。」 笙悟とプリメーラは全校公認の仲。しかし、プリメーラが芸能人をしているため、校外では関係は秘密なのだ。 「だから要は気持ちだって。」 「ねー♪それに、子供は何人、なんていう具体的な将来設計があるわけじゃないなら、男同士でも出来るわよ?」 「あ?そうなのか?」 こういうことに関しては、女の子の方が博識だったりする。 「あのね、・・・・・・」 一方、ファイの方は。 「初体験ー?」 「そ。こっちも向こうも二人部屋でね。勿論示し合わせたんだけど。点呼の後に入れ替わって、ロストバージンってわけvv」 「ロストバージンー?」 「・・・・・・ファイ君って、童貞?」 「童貞って何ー?」 そう訊くと、一緒に昼食を食べていた女子達に、嘘だろうという顔をされた。そんなに常識的な単語なのだろうか。 「あー、でもファイ君って、そういう話は入れてもらってなさそうだし。」 「そうよねー。黒鋼君とか、いつも屋上で回してるもんねー、エロ本。」 「エロ本?そんなの回ってるのー?」 「やっぱり回してもらった事ないんだ。」 「でも、気持ちは分かるわよねー。」 「ファイ君がそういうの読むの、想像できないもんねー。」 「確かに読んだことないけどー。童貞って何ー?」 「・・・・・・黒鋼君に訊いて?」 「『童貞って何?』じゃなくて、『黒むーって童貞?』って訊いてねvv」 「それで童貞って言われたら、『貰ってあげる』って言ってねvv」 「童貞って貰うものなのー?」 「貰うものなの♪」 近代は情報社会と呼ばれるほど多くの情報が飛び交っています。その中から正しい情報を得て、正しく活用しましょう。 (↑今回の教訓) 騙されたんじゃないかと思う。 「あ、あの・・・何するの・・・?」 予想外の展開に途惑いながら、ファイは黒鋼を見上げた。二人分の体重を受けて、体がベッドに沈む。 「お前が言ったんだろ?貰ってやるって。」 天井を背景に、当然のようにそう言い放つ黒鋼に両手を押さえつけられて、ファイは全くといって良いほど身動きが取れない。同じ男なのに、こんなに力の差があったのかと思い知らされる。 いやそれ以前に、同じ男なのに何故こんな状態になってしまったのか。 「あの・・・童貞って何ー?」 「知らねえのか?セックスしたことがない男のことだよ。」 「えーっと、じゃあ貰うっていうのはー・・・」 「こういうことだろ?」 (じゃあ、『初体験』ってこういうことー?) 修学旅行でとはなかなか勇気のある。本当に思い出に残る旅行になるだろう。 なんて事を呑気に考えている場合ではない。 「あああああの、ちょっと待って、黒みー」 「何だ。」 「えっと・・・前言撤回ー・・・。」 「もう遅い。」 「だって・・・おかしいよこんなのー」 「男同士だからか?」 「そうじゃなくてー・・・・・・黒むー、オレの事好きなのー・・・?」 「・・・・・・・・・。」 黒鋼の動きがぴたりと止まる。悩んでいるのだろうか。 しばらくして開いた唇からこぼれたのは、問に対する返事ではなく、 「じゃあお前は・・・好きだって言ったらやらせるのか?」 「・・・・・・質問に質問で返すのって、ズルイと思うー。」 そう言いながら、自分もはっきりと答えが出せないでいるのは、自分の気持ちが分からないから。 「・・・・・・うーん・・・分からない・・・」 「俺も・・・・・・分からねえ。」 「したら分かるの?」 「さあな・・・。確かめるためにするのは・・・嫌か?」 体から始まる恋も良いと、昼間、笙悟が言っていた。元をたどればあんなキスから始まったのだから、もうどんな形でも良い気がする。 それに、どれだけ迷っていたとしても、少しでも確信がなければ、体を繋げようなどとは思わない。 まだ明言できるほどではないが、これはきっと 突然、部屋のチャイムが鳴った。 「黒鋼ー、ファイー、トランプやろーぜー!」 「馬鹿、大声出すなよ、見つかるだろ!」 同じ班の男子だ。先生が点呼を終えて部屋に帰ったのを見計らって、抜け出してきたのだろう。明日は最終日。今夜は徹夜で遊ぶつもりか。 「っち、こんなときに・・・」 舌打ちして、黒鋼はベッドから降りようとする。それを、ファイが止めた。 「・・・鍵、掛かってるから・・・外からは開けられないよ・・・・・・。」 「・・・いいのか?」 それは、外を無視して良いのかという意味ではないことくらい、ファイにでも分かる。 それでも、こんな話を、中途半端にしておくのも。 「あの、オレ・・・具体的に何するのか知らないんだけどー・・・」 「俺も聞いた知識だけだ。」 「そっか・・・童貞だもんね・・・。」 「うるせえよ。」 「・・・・・・・・・キスして」 ベッドが静かに軋む。 外で、笙悟の声がした。 「もう寝てるんじゃないか?いつまでも廊下にいて見つかるとまずいし、3人で遊ぼうぜ。」 昼間のは、やっぱりキスじゃないと思う。本当は、こんな風に、味わうものではないのか。 「ん・・・・・・ふ・・・・・・キスって舌入れるのー?」 「・・・最中にそういう質問するのはやめてくれ。」 「あ、はーい。」 いまいちムードが醸し出せないが、黒鋼はファイのシャツのボタンに手をかける。一つ一つ外していきながら、首筋に落とすキスは、跡が残るとまずいので、ただ触れるだけに留める。友人はともかく、ファイの父親にばれると怖い。 緊張しているのか、黒鋼の服を握るファイの手に、きゅっと力がこもる。 「あ、あの・・・オレ、胸ないよ・・・?」 「知ってる。昼間見た。」 「幻滅しないでね・・・?」 「女の代わりに抱くんじゃねえ。」 ボタンがはずれ、シャツが開かれる。暴かれた白い肌を見下ろしながら、黒鋼もシャツを脱ぐ。 「おまえ、全然焼けてねえな。」 「体質だよー。殆ど服着てたし。・・・黒みゅーは、焼けたねえ・・・。」 見上げる体は小麦色に日焼けして、同性のファイから見ても、カッコイイと思う。羨ましい。 そんなことを考えて、不意に互いの体を見合っているこの状態に気恥ずかしさを覚え、ファイはふいと顔を背けた。その動作が不自然だったのだろうか、黒鋼が小さく笑ったのが分かって顔が赤くなる。 「こ、こういう時って電気消すもんじゃないー?」 「恥ずかしいなら目ぇ瞑っとけ。」 「それって意味ないよー。」 それでも言われるがままに目を閉じると、胸に柔らかい濡れた何かが触れるを感じた。目は閉じたままだが、舌ではないかと思った。 「そ、そんなトコ舐めて楽しい・・・?」 「気持ちよくないか?」 「気持ちいい・・・?・・・あ・・・っ」 女の子じゃないんだから、胸なんかで気持ちよくなれるわけがないと、そう思った瞬間、突起に歯を立てられて、思わず漏れた声に自分自身で驚く。こんな声、聞いたことがない。 「へえ、ホントに感じるんだな。」 「感じ、るって・・・・?あ、やっ・・・、黒、む・・・なんか・・・変、だよ・・・」 「感じてんだよ。」 「や、あ・・・っ」 黒鋼が触れるたびに、体内に電気が走るような感覚に襲われる。体が勝手にはねるのを、止める事が出来ない。 不意に、ズボンの中に黒鋼の手が侵入してきた。そしてファイの中心を握りこむ。 「あっ、何・・・?」 「先に抜いてやるよ。」 そう言って、黒鋼はファイを刺激し始める。 一気に体が熱くなる。体中の熱が、そこに向かって集まるような感覚。 「やだ・・・何これ・・・」 体が、自分のものではないような。困惑し、恐怖さえ感じるファイに、黒鋼は平然と言い放つ。 「自分でもするだろ?」 「黒りん、こんなことしてるの・・・?」 「・・・・・・じゃあ、俺が初めてなんだな。」 初めての感覚を教え込む。そう思うと、なかなか快感だ。 薄く笑みを浮かべて、黒鋼はファイを刺激する手を早めた。 「や、あっ・・・・・・黒、む・・・・あっ・・・!!」 快楽に抗う方法さえ知らないファイは、黒鋼に追い上げられるまま、あっさりとその手の中ではじけた。 「悪くはねえだろ?」 「・・・う・・・・・・」 問われて、ファの目に涙が滲む。 快楽を快楽だと理解できず、自分の体に何が起こったのかが分からない。ただ恐怖しか感じなかったようだ。 「も・・・やめ・・・・・・」 「ここまで来てか?」 「ごめ・・・・・・でも、怖・・・・・」 涙が頬を流れていく。吸い寄せられるように、黒鋼はそれを舌で掬った。 どうしても嫌だと言うなら、無理に続けるつもりはない。 もともと、自分の気持ちを確かめるためにと始めた事だ。 答えは分かった気がする。 この腕の中の存在を、たまらなく愛しいと感じたら、それがきっと。 「・・・・・・好きだ。」 「・・・・・・・・・・・・」 驚いて見開かれたファイの目から、また涙が一筋。 それを再び舌で掬って、そのまま唇を重ねる。 気持ちが分かれば。もう続ける必要はないのかもしれない。 けれど、分かったからこそ、続けたい。 「好きだ。抱きたい。」 「黒・・・む・・・」 気持ちを確かめたのはファイも同じ。 ストーレートな言葉に、涙の意味が変わったら。その言葉に、応えたいと思ったら、それがきっと。 「オ・・・レも・・・・・・好き・・・だよ・・・」 「・・・続けていいのか?」 「・・・・・・」 黒鋼の腕を掴むファイの手が小さく震えていた。 けれど、見上げる瞳に宿るのは決意の色と、そして確かな想い。 おずおずと、けれど大きく、ファイがうなずいたのを合図に、二人は三度目のキスを交わした。 翌日、帰りの飛行機の中。 「なあ、トランプしようぜ!・・・あれ、」 前の座席の友人が、背もたれの上から顔を出して後ろの黒鋼とファイに声を掛ける。しかし返事はない。 「どうした?」 「寝てる。二人とも。昨夜もさっさと寝てたくせになー。」 「疲れてるんだろ。起きてるメンバーでやろうぜ。」 そう言いながら、笙悟も後ろを覗く。 ぐっすりと眠っている二人は、きっと前の席で少々騒いだくらいでは起きないだろう。 「でもこいつらさあ、これでホントに出来てねえのか?」 「さあな。」 ファイが黒鋼の肩にもたれて、その頭に黒鋼が頭を乗せて。たまたま重なったのだろう、二人の間の手は、まるで繋いでいる様で。まるで新婚旅行の帰り道だ。 「一晩あれば、がらっと変わる事もあるさ。」 そう言って、笙悟はトランプのケースを開けた。 =後書き= えええええ、誰、こいつら。ファイさんがウブなんですけどどうしたら良いですか。 これから覚えていくんですか。これで良いんですか。 さっさとやってくれって思った。打ってるこっちが恥ずかしいんだよ!!!最後は耐え切れなかったとですよ。 途中で切ってすいません。ねちっこくてすいません。キャラの人格を果てしなく無視した感じですいません。 世界は腐女子が回してるんだよ(還れ) えー・・・成長(性徴)には個人差がありますから。 中3でもまだな子もいると妹の保健の教科書にグラフで載ってました。(何がなんてそんな。) ファイさんが、●●してるとこなんて想像つかないんだよ。嘘、ちょっといいなーと思ったよ、すいませんね。 変な人ですとも!! 「お父さん、何か出たー」も捨てがたかったんですが、それをするとパパがなあ・・・(困) こっから先、いきなりラブラブバカップルになるかもしれませんけど生ぬるく見守ってやってください。 復習:今回の(雪流さん的)萌ポイント『童貞って貰うものなのー?』『貰うものなの♪』 予習:人間には避けて通れぬ道がある。次回、高校受験編!!(痛!!)パパが出るよ、パパが♪ <早くお帰りください。> |