繋いだ手







「王様だーれだ!」
「わいや!!」
明るい譲刃の声に元気に答えた空汰を見て、残り三人は同時に溜息を漏らした。
それは、王様になれなかったことを悔やむものではなく、何で王様ゲームなんかやってるんだということに対して。

『大学部も夏休みに入ったし、皆でカラオケでも行こかー』
と空汰が提案したのがきっかけで、天の龍学生組(神威・昴流・嵐・空汰・譲刃)は都内のとあるカラオケボックスに来ていた。しかし明らかに三人、カラオケとは無縁そうなのが居る。
実際、マイクを握るのは空汰と譲刃ばかりで、他三人が盛り上がらないため、王様ゲームでもということになったのだ。
ちなみにフリータイムなので、料金の心配は無用である。

「ほな、2番が『桃色片想い』を熱唱や!!」
桃色片想いってなんだろうと思った者もいるはずだが、それでも皆、律儀に自分の番号を確認する。そして三人は、2番でないことにほっと息を漏らした。
「2番、猫井譲刃、歌います!!」
「おう、譲刃ちゃんか!気合入れて頼むで!」
「はいっ!えっと、『桃色片想い』・・・」

「わいは姉ちゃんでもええなー思てんけどな。」
譲刃が番号を調べている間にポツリとそう呟いた空汰は、嵐に視線だけで射殺されそうな勢いで睨まれた。
ちなみに私としては他の二人でも良いと(断)

そして譲刃の熱唱が終わり、次の王様を決めようとしたとき、部屋の電話が鳴った。
一番近かった嵐が受話器をとる。
「はい・・・はい、分かりました。もうそろそろ時間だそうです。」
「あー、これからやゆう時に・・・」
何処がだ、と思ったのは3人だけ。(多数派なのに弱いというのはどうしたことか。)
フリータイムといっても永遠に使えるわけではないので、今日はこの辺でお開きだ。

「じゃあ、これで最後にしましょうか。」
「そうやな。王様誰や?」
「はーい!」
どうやら神は、ノリを大切にする者に味方するらしい。

「じゃあ、1番と4番の人が、手を繋いで繁華街を一周してから帰ってくること!」
「おおっ!わいはそういう命令を待っとったんや!行くで姉ちゃん!王様の命令は絶対や!!」
「私は2番ですが・・・。」
「・・・・・・・。」
そこで空汰もよく自分の番号を見てみると、
「何や、3番や・・・。」
何で、する気満々だったんだ。

しかし、ということは。
皆の視線が残りの二人に集まる。
「・・・俺、1番・・・」
「4番です・・・・・・」
手を繋いで繁華街を一周するのは、神威と昴流に決定。


「じゃあ、頑張ってくださいねー。」
自分で命令したこととはいえ、所詮他人事。譲刃は元気に手を振って、他の二人を引き連れて帰ってしまった。最後に嵐が向けてくれた同情の視線が逆に痛かった。

「・・・・・・行こうか。」
「うん・・・」
いつまでもカラオケボックスの前で手を繋いで立ち尽くしていても仕方がないので、二人は商店街の人ごみへと突入する。皆、夏休み突入で浮かれているのか、いつも以上に人が多い。
一人で歩いていても目立つ二人である。手を繋いで歩くとなると、周囲の視線は二人に集中。(している気がするのだ、本人達は。)

そこでふと。
「昴流、譲刃たちは帰ったんだから、手を繋がなくても、ばれないんじゃないか?」
「あ・・・それもそうだね。離す?」
「うん・・・。」
繋いでいた手が離れる。
夜風が掌に涼しかった。

(あれ・・・・・・)
風が当たるから感じる、喪失感。
自分から離すことを提案したはずなのに、何だか物足りないような。
「あ・・・・・」
そんなことを考えている間に、昴流の姿は人ごみの向こうに隠れてしまっていた。
慌てて人ごみを掻き分ける。
完全に見失ったかと思ったが、少し行ったところで昴流は待ってくれていて。

「・・・・・・やっぱり繋ごうか。」
くすりと小さく笑って伸ばされた手は、人ごみに慣れていない神威を見かねたものか、それとも同じ喪失感を、昴流も感じたからなのか。
「・・・うん。」
差し出された手を握る。そのぬくもりは、涼しい夜風より心地よかった。

「ついでに家まで送っていくよ。」
「うん・・・ありがと・・・」
その言葉は、きっと繋いだ手を離したくないからだと。

少しだけ、譲刃の命令に感謝した。







           テーマ:傷の舐め合いじゃない昴X神。
           いかがですか。無理ですか、そうですか。
           難しいんだよ、昴X神は!
           すでに恋愛感情さえない感じで失礼します。
           切ない30のお題なのにいまいち切なくないし。
           できあがってみればただの放置プレイ話・・・。
           どうせなら1番と4番がキスにすればよかった・・・。(待
           

         


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