この国は星が綺麗です
そこから星は見えますか?
凍息
「寒いなあー」
呟くと、足元から無愛想な声が聞こえた。
「じゃあ、さっさと降りて来い。」
あ、声を掛けてくれるだけでも、愛想はあるのかな?
「黒みゅーもおいでよー。星が綺麗だよー?」
「興味ねえ。」
でも、やっぱりつれないなあ。
こんなとき、あの人なら―――
『風邪を引くぞ』
言葉と一緒に与えられるぬくもり
思い出しちゃったでしょー。
君が来てくれないからだよ。
どうしてこんなに違うのかな。
髪の色とか、手のぬくもりとか、そんな所はそっくりなのに。
君はあの人とは違いすぎて、逆にあの人を思い出させる。
「黒様ー」
「なんだ。」
「あたためてよー。」
ガタンッ
あれ、何か落しましたー?
すぐに窓から覗く君の顔。
オレを見上げる赤い瞳。
どうしてそんなに怒ってるのー?
「そんな格好で屋根の上なんかに登るからだろ!!寒いならとっとと降りて来い!!」
嘘だよ、寒くなんかないよ。
あの国は、もっと寒かったんだから。
『中に入らないのか?』
『もう少しー。』
『何を見ている?』
『・・・・・・星・・・。』
結局、君は登って来てくれないから、一人寂しく屋根の上に寝転んでみる。
屋根の感触は堅くて冷たいけど、背中に何かが当たってると、何か落ち着くから。
「黒りん、聞こえるー?」
「何だよ。」
「オレの国はすごく寒くてさー、夜中に外に出ると、吐いた息が凍ってきらきら光るんだー。」
空に向かって伸ばした手は、当然、星に届いたりはしない。
でもあの国では届いたんだ。冷たい氷の星の粒。
滅多に晴れないあの国では、本物の星が見える日なんて、殆どなかったけど。
「本当に星みたいだったんだよ・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
君と一緒。
この国はあの国とは違いすぎて、逆にあの国を思い出させる。
届かない星は、離れてしまったあの人との距離みたいだねー、なんて。
全然似てない二人を、気が付けば重ねてみてる自分が、たまらなく嫌なんだけどさ。
「黒様ー」
「何だ。」
「キスしてー?」
・・・・・・カタン・・・
「いらっしゃいー」
そんなに難しい顔しないで。
せっかく登ってきたんだから、ちょっと星でも見たら?
ああ、うん・・・即物的なのも、大歓迎だけどさ・・・
「ん・・・・・・ふ・・・・・・・・・・・・うわあ、黒様、大サービスーvv」
「くだらねえこと言ってねえで、さっさと降りて来い。風邪引いてもしらねえぞ。」
「んー、もうちょっとー。」
「・・・・・・・・・放せ。」
「いやー。」
あれ、諦めるのー?
そうだねー、なんだかんだ言っても、君は優しいから。
そんなところだけ、そっくりなんだよねー。
違うのは、オレの隣には座っても、自分から抱きしめてはくれないところかなー。
「黒たん」
「何だよ。」
「もう一回。」
ゴメンね、これしか共通点が見つからないから。
違いがあの人を思い出させるなら、似てる所を見るしかないでしょー?
「星を見るんじゃねえのか。」
「いいからー」
この間だけは、何も見なくてすむから。
君だけしか見えないから。
オレに触れてるのは君だって事。
オレはここに居るんだって事。
ちゃんと認識するためにさ。
あの人に似てる君のぬくもりで
オレを此処に繋ぎとめて
アシュXファイが好きです。
同志様募集中!!
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