Prayer
「いつか別れる日が来たら、」
そんな文句で始まる一言に、手にした徳利と杯が触れて音を立てた。
「こういう話は嫌い?」
そう首を傾げられて、動揺を露わにした自分を悔いる。
そして其処から先は意地。
不確定な未来の話と、酒が不味くなる話は嫌いだが、自分は平生を保てると言う自信と、何処か寂しい瞳の彼のために。
「続けろよ。」
改めて酒を注ぎなおした。
「引き止めたりしないでね。」
それは、どういう前提の下に話される言葉なのか。
残されるのは自分で、去っていくのは彼で。
其れはあくまでも不確定な未来の話であるはずなのに。
「どうして。」
「オレは、進まなくちゃいけないから。」
今もきっと、立ち尽くしているだけのくせに。
「泣かないでね。」
誰に向かって言っているのか。
禁じられるまでもなく涙なんて不釣合いなものを。
「どうして。」
「オレまで泣きそうだから。」
泣けるだけの強さなどないと、言葉の裏で認めるくせに。
「振り向かないでね。」
誰がそんな。
そんなことまで禁止する権利を持つと言うのか。
「どうして。」
「オレが振り向くから。」
確かに、別れの後に目が合うのは情けないとは思うが。
「忘れてね、オレの事。」
「出来ねえ。」
「オレは忘れるよ?」
さっきから聞いていれば、何処まで自分勝手だ。
「どうして。」
「生きるために。」
そんなこと、望んでもいないくせに。
「それでお前は、俺がそれ全部承諾するとでも思ってるのか?」
「ううん、でも、最後のだけでも聞いてくれると嬉しいなって。」
忘れろ、と。
唯一拒否した願いだけを叶えろと言う。
「どうして。」
「だって、オレは忘れるから。何かの拍子にまた会った時に、『誰だっけー?』って言うんだよ?」
「・・・・・・・・・。」
さっきから聞いていれば、どこまで自虐的だ。
すべての願いは、自分だけが傷ついて、こちらを傷つけないために。
「馬鹿やろう・・・」
呟いた言葉の響きに愛しさを滲み出させてしまったら、こちらもなかなか大馬鹿者だ。
平生を保てる自身は何処へ行ったのか。
「じゃあ其の日が来るまでは、」
「うん?」
すべては愛しい人のために。互いの願いが互いを傷つけることのないように。
前へ進むことを表面上は願う彼に、行くななどとは言えないから。
だからどうかせめて。
「其の日が来ないことを祈ってろ。」
「・・・・・・・・・うん。」
あ、あれ、シリアス書くはずだったのに甘・・(汗)
たまには深刻になりやがれ。(何の不満があるの)
そういえば黒ファイは、いつか訪れる別れがおいしかったんだよな、と初心に戻って。
愛しい貴方に捧ぐ祈りと言うコンセプトで。
タイトルはPRAYERは祈る人。
とりあえず、別れた後に振り返って目があっちゃうといいなって言う主張をしたかったんですよ。
目があっちゃうといいな!!(無理やり)
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