しまった




そう思ったときにはもう手遅れで、目に映る紅は、胸から噴き出した自分の血液。

痛みを感じる前に、喉からも血が溢れ、息苦しさを感じたときには、頬に地の感触。

死ぬな、と確信した。



情けねえ。



「                          」


遠くから声が聞こえる。いや、違うな。声の主の気配はこんなにも近い。

ああ、心臓の音がやけにうるせえ。どうせもうすぐ止まるんなら、少しくらい黙ってろよ。

まぶたが重い。それでも無理矢理押し上げると、予想通り、間近にはあいつの顔。

はっきり見えねえな。おい、泣いてんのか?珍しいな。



「                    っ!!」



あ?何言ってんだよ。聞こえねえっつてんだろ。

うつむくなよ。涙なんて見えてねえよ。

輪郭のはっきりしない、金と碧。それだけしか見えてねえんだから。




あれ、何で俺、こいつの髪なんか触ってんだ?無意識の行動ってやつか。

あーあ。血がついちまった。悪いな。

でも、金に紅は映えるな。最期の光景にはもってこいだ。



「              っ          !!」


うるせえよ。聞こえねえっての。

分かったって。死なねーから。

頼むから・・・ちょっと・・・・・・・・寝かせてくれ----------







「黒みゅー!!あ・さ・だ・よ!!!」
「・・・・・・・・・・・・・・あ?」
「もう、何回起こしたら起きるの。せっかく俺がスープ作ったのに!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

自分の身体を調べてみても、怪我なんて一つもなかった。布団の横で騒いでいる奴の髪にも、血なんかついちゃいない。

「・・・・・・夢か。」

それにしては妙にリアルな。

「黒りん、夢見たのー?」
「あ?まあな。」

おい、何でそこで笑う。俺が夢見るのがそんなにおかしいのか?

「どんな夢ー?」

・・・まあ、隠すほどのものでもねーが。

「確か、戦ってる夢だったな。危うく殺されかけた。」

あのままだと確実に死んでたけどな。
おい、何で笑うんだよ。俺が殺されかけるのが楽しいのか?

「夢って、深層心理の恐怖とか願望の現われなんだよー。黒むー、臆病者かマゾだねー。」

誰が臆病者だ。・・・マゾって何だ?

「でも、黒様が負けるなんて、誰と戦ってたの?」
「あー?覚えてねーなー。」

最初に見たのは紅。次に見たのは金と碧。そして最後が、金に映える紅。

そういえば、最後のシーンでぼやっと見た気が・・・。

「よく見てねえが・・・。確か肩下あたりまでのまっすぐな黒髪の・・・」
「・・・・・・!」

ん?何固まってんだよ?
は?何抱きついてんだよ?
・・・・・・おい、まさか泣いてねーだろうな?

「黒りん、」
「あ?」
「黒りんが殺されそうになったらオレが守るからね。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ?」

それはどんな冗談だ。殺されるより情けねえぞ。

とりあえず泣いてねえんだな?

「いい加減離れろ。スープが冷めるんじゃねーのか?」
「どーせ、もう冷めてる。」

そうかよ。

で、お前は俺に抱き返せとでも言うのか?
それこそ冗談じゃねえ。

気が済むまでそうしてろ。俺は俺のプライドにかけて、絶対に抱き返したりしないからな。






                  突っ込み禁止。
                  黒鋼の深い愛情など感じ取っていただければ幸いです。
                  黒Xファイ←アシュラ王なの。アシュラ王、出てませんが。
                  アシュラ王は黒鋼より強いと思います。
                  死にネタ書いてみたかったんです。
                  ファイさん殺したくないので黒鋼で。(おい。)






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