■八神ちさ様から頂きました♪■






「王子、何か欲しいものってありますか?」

魔術師のその言葉に、僕は一瞬眼を見張った。

<特別な日>

今日は僕の8度目の誕生日。朝から城の中はどこか華やかな雰囲気だし、甘い匂いが
そこら中を漂っている。
母上や父上もいつも以上にニコニコしていて、いつもは寂しい雰囲気の城も今日は何
故かハルの様に明るい気分が湧いてくる。
ハル、なんてお話の中でしか知らないものなんだけどさ。
でも、僕は毎年この日が一番大好きだった。だって皆笑顔だし、寒さを感じないか
ら。
けど今年は違った。魔術師が一緒に居ることがいつのまにか僕の一番好きな時になっ
ていたから。
だから、魔術師が欲しいものを聞いてきてくれたとき嬉しさで思わず抱きついちゃっ
たんだ。
魔術師はその柔らかい笑顔を一瞬驚きの色に染めたけど、その白い手で僕の髪を優し
く撫でてくれた。
いつもそんなふうに、奥から柔らかい顔をしていてくれたら嬉しいのに。寂しい色は
今日は見えなくてほっとした。
魔術師が寂しいと、僕も寂しいから。
そんなことを考えながら魔術師のお腹あたりに顔を埋めているともう一度、頭上から
柔らかい声が降りてきた。

「王子ー、何か、欲しいものってありますか?」

先ほどと同じ問い。僕は顔を上げると魔術師の笑顔を見上げ答えた。

「ファイとずっと一緒に居たいな、僕。」

僕の答えに魔術師は、あの悲しい色を瞳に載せた。

「…ファイ?」

けど、僕が名前を呼ぶとそれはすぐに笑顔の奥へ消えていった。
そして魔術師はしゃがみ、僕と目線を合わせると微笑んで僕の手を取り

「…仰せのままに」

そう答えて僕の手の甲を額に当てた。
僕はとっても嬉しいのに、心のどこかが焦りと寂しさを感じていた。
どうしてか全然わからないけど、魔術師を放さないために首にぎゅっと抱きついて

「ファイがどこか行っちゃったら僕、絶対迎えに行くからね。僕はどっこも行かない
し、ずっと一緒に居ようね」

そう、決意表明のように静かに言った。
魔術師はどんな顔をしてたかわからないけど、僕の背中をぽんぽんと優しく撫でてく
れただけで今は幸せ。

8度目の誕生日は去年と同じぐらい皆笑顔で、暖かくて、嬉しいものだったけど
僕にとっての一番は沢山のプレゼントでもケーキでもなく、全部が終ったあと眠る僕
に子守唄を歌ってくれてる魔術師の存在。

ファイ、僕来年も絶対お願いするからね!

END




私案外独りじゃなかった(感涙)ちさ様から頂きました。
8歳にしてプロポーズです、王子・・・v
未来を知っていても幸せを願ってしまう純情っぷりできゅんきゅんします。
でもお腹に顔を埋めるとか、子守唄歌ってもらうとか、うらやましすぎです、王子・・!!
しかしファイさんは逆に哀しそうでそれもまた素敵・・v
ちさ様、ありがとうございました!!



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