セレス国。
ここは、年中雪に覆われた魔術の国。
殆どの国民は魔術を習得し、力の強いものは魔術師の称号を与えられ、王宮に仕えることを許される。
その中でも、特に秀でたものが一人。
彼はその強大な魔力ゆえに無尽と思えるほどの生命を有し。
老いさえ忘れた美しい姿のまま重ねた年月の中で膨大な知識を培い。
その博識により、この国で唯一、ある意味最も重要といえる任務を与えられた。
王位継承者を時代の立派な王に育て上げる事。
時には母のように慈しみ。
時には父のように厳しく。
時には友のように親密に。
幼いころより誰よりも近い場所で継承者に接する彼は、誰よりも厚い信頼を得。
王位継承後も王に近い場所で政治に関わる。
そして王に王子ができれば、またその教育を任される。
何代も、何代も。
いつ来るとも知れぬ終焉の日まで。
そんな日々を繰り返すのだろうと。
「ファイ、息子ももう6つだ。そろそろお前に預けようと思うのだが。」
ある日、王がそう口にする。
いつか、彼の父もそうしたように。
「王子様ももうそんな年ですかー。分かりました。必ず陛下のような立派な王に。」
多少思うところはあっても、これが宿命だと諦めてしまえば、断る理由などどこにもない。
何も感じないように、過ごす事にももう慣れた。
それでもこんな日が来ると。
繰り返しを実感すると。
少し、心が揺れてしまう。
初めてお目にかかる王子様に、自分はちゃんと笑えているだろうか。
「この人が今日からお前の教育係になる魔術師だ。」
聡明な顔立ちに、意志の強い金の瞳を宿したその王子は。
魔術師にとってはただ、自分の時間を通り過ぎていく幾人もの王のひとりとなるであろう者にすぎない。
「初めまして、王子様ー。ファイ・D・フローライトです。」
しかし柔和な笑顔に悲哀の瞳を宿した魔術師は。
いつか王となる者に、掛け替えのない存在になる。
想いが交錯するのはいつものこと。
心の揺れはすぐに収まる。
何も感じないように、過ごす事にはもう慣れた。
今日のこの出会いもきっと。
何も、変えてはくれないのだ。
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とりあえず設定みたいなのを一枚。
この王子が未来のアシュラ王です。
ファイさんは王が大事って言うより国が大事みたいな意識をもってるので、王の愛情には応えられないんだけど、愛情がないって言うんなら体の関係はOK
ですよーみたいなスタンスなんじゃないかと思う。このパパ王様とも関係持ってるんじゃないですかね。また三角関係か自分。
パパ王様はファイが大好きなんだけど、自分は彼を遺して逝くことを悟ってるから愛情はないってことにしてるんです。そのほうが彼は悲しまないと思って。ファイさんは、王のことは好きじゃないって自分に言い聞かせてると思うんです。本当は王が死ぬときに一緒に連れてってほしいと思ってるんですけど(恋愛感情っていうか、一応現時点で一番大切な人ではあると思うんです)、王はやっぱり王子を預けちゃうんですよ。彼もまたこれに関してはファイの運命だと割り切っちゃって。
王子はまだそこんところ分からないのでがんがん攻めてきて、ファイさんがぐらぐらするといい。というところを書いていけるといい・・。
ちなみにファイさんの年のとり方ですが。二十歳くらいまでは普通のスピードで成長して、そこから急激に遅くなる方式で。
20で城に入ってすぐに一人目の王子の教育に携わって(このときはさすがに見習いで)二人目からはファイさんが一人で頑張ったとすると、アシュラ王の前に一人か二人教えられるんじゃないかと思います。年齢は100歳前後と見積もっています。もっと熟練だと思ってたんですけど、原作での「黒鋼の数倍生きてる」発言で上限が設定されてしまいました・・・。100歳も厳しいなあ・・。まあいいや、アシュラ王年下設定も所詮捏造だし。楽しいからOK。
本文よりあとがきのほうが濃厚になってきました。とりあえずこの方向性で進めたり、まったく違う設定に走ったりしていきたいと思います。
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