『痛』(封神)
これはまるで幻肢痛
なくした腕が痛むよう
お前の苦しみがまるで そう
失くした半身の痛みのように
同じ名を持つ違う人間
同じ運命の下に生まれて違う責を負う者
ともに互いになりえた二人は
今は引き裂かれた半身同士
なあ、お前も感じないか
俺と同じ痛みを
こんな仕組みじゃないかと思うんですが
『別』(星昴)
別れの言葉を覚えていますか
―――さようなら、皇昴流君
もう二度と逢う事はできないかもしれないと
諦めに似た切望を抱いて
それなのにやっと見つけた貴方は
次を予感させるような言葉を残して
―――では、また・・・
胸がざわめいたんです
また騙されるんです
それでも悦びに似た絶望を抱く僕を
どうぞ愚かだと嘲って下さい
マゾっぽい・・・。
『蜜』(封神)
「珍しいな、蜂蜜か。」
朝食のテーブルの上にあったビンに目を留めて、封真が懐古の笑みを浮かべた。
珍しいというよりも、いっそ懐かしい。
「小さいときに食べて以来だろ?久しぶりに食べたくなってさ。」
焼きあがったトーストを運びながら神威が応える。
最後に口にしたのは確か、小学校に上がるかなり前。
「蜂蜜は買わないことになってたからな。俺の家もお前の家も。」
「・・・どうして?」
「覚えてないのか?」
首をかしげると、少し意外な顔をされた。
「お前、小鳥と二人でテレビに蜂蜜塗って、おばさんと母さんに怒られただろ。」
「・・・そんなことあったっけ。」
「ああ。」
そういって封真が持ち上げたビンの中で、琥珀色の液体がゆっくりと流れる。
「・・・・・・何のために?」
思い出せない自分を封真の中に探すと
「『くまのぷーさん』にやろうとして。」
蜂蜜トーストと一緒に、苦い過去が返された。
その後両家では蜂蜜禁止令があったとか
国語の先生の息子さんの実話(勝手に・・・)
『嘘』(瀬神)
「俺も友達になりたいな」
なんて大嘘なんだけどね
でも君は俺が隣に居てもどこか遠くを見てるから
もうすぐ本当にしようと思うよ
諦めんな!
『受』(星昴)
基本的に賭けが好きな人なんだなと、気づくのに時間はかからなかった。
「昴流君、賭けをしませんか?」
「どんなですか?」
「今日の試合、阪神が勝つか巨人が勝つか。」
野球なんて大して興味もないくせに、テレビのチャンネルを回してる。
「景品は?」
「敗者が勝者の願いをひとつ。」
『賭け』をちょうど良い理由付けにしてるとしたら結構照れ屋なのかもしれないな、なんて思ってみたりもするけれど、この人に限ってそれはない。
楽しむのは勝利へ至る過程とその後の景品。
「・・・受けてたちましょう。」
勝ってもベッド負けてもベッド(お・・
『肩』(封神)
午後からの降水確率90%
控えめな表現を美徳とする気象庁がそう言うのだから
今日は間違いなく降るだろう
(傘は・・・置いていこう)
そう思いなおして伸ばした手を引っ込めた
確か彼の学年も今日の授業は6時間
話の長い担任のおかげで彼の方が少し遅い
玄関あたりで拾ってもらって
ひとつの傘で一緒に帰ろう
並んだ肩が触れる距離で
しかし身長差があるので肩は並ばないと思います(ひど)
『頬』(瀬神)
大きな木の下で 君が一人で泣いてた
「あ・・・」
「司狼君?どうしたの?」
「な、なんでもな・・」
慌てて涙を拭おうとする君の手をとって
でも俺にはどうすることも出来ない
「涙は、無理に止めるより、最後まで流すほうがいいんだ・・・」
こんなとき、もっと気の利いた一言でもいえたらいいのに
「ここにいていい?」
「・・・・・・」
頬を伝い落ちる君の涙を見届けても
君の心が解るわけでもない
それでも君の頷きに甘えて
ただそこに立ち尽くす
最後の涙を俺が拭えば 君の心が見えるかな
その心の中に自分がいなかったとき君は立ち直れるか。
『逢』(瀬神)
If I were a bird, I could fly to you.
―もし私が鳥だったら貴方のもとへ飛んでいけるのに―
―――本当に?
だって鳥の目は夜は働かない
夜は君を探せない
ねえ もし君が呼ぶなら
俺は俺のままで 君に逢いに行くよ
英文は、「昼限定で貴方に会いたい」って言う、微妙に愛の足りない文章。
『欲』(封神)
俺が欲しかったのは
いつかと同じ笑顔よりも
今俺を抱きしめるお前の腕のぬくもり――
どっちの台詞か分かんない感じで。
『声』(星昴)
「タバコっておいしいですか?」
珍しくこちらに興味を持ったかと思ったらそんな質問で、非行の始まりかと心配させられる
「吸わない方がいいですよ」
なんて吸っている本人が言っても何の説得力もない台詞を煙と一緒に吐いておいてから
「間が持つでしょう。会話が途切れたときとか。逆に沈黙が恋しいときに吸ってもいいですね。」
そしてもういちど、吸わない方がいいですよ、と。
煙を深く吸い込んで、ゆっくりと吐き出す。
面白そうにそれを眺める相手は、沈黙沈黙沈黙。
「・・・何か喋ってください。」
「え、でも・・・」
「二人でいるのに黙ってるのっておかしくありませんか?」
「だって、星史郎さんが今・・・」
「・・・ああ。」
ひとつ、言い忘れていた。
しかし言われなければこれが分からないのなら、やはりまだ彼にタバコは早い。
「僕が君の前で吸うときは、ただ君の声を聞いていたいときです」
アンタ誰ですか。
『呼』(封←神)
12月13日
最近オカルトにはまってる空汰が、
名前を呼んだら悪魔を召喚できるんやで!
といかにもらしく話すので
呼んだら会えるかな、なんて
よく考えるとすごく失礼な考えが浮かびました。
神威ちゃんの日記風味。こんなこと日記にかいてたら凄い恥ずかしい子だな!
『汚』(星昴)
貫かれた胸は不思議なほどに全く痛みはなくて
僅かな息苦しさをこらえながら彼に手を伸ばす
青ざめた頬を伝う水を掬おうとした指先に
けれど見慣れた赤い色
この手で触れれば確実に汚れる白い肌を
見たくないと思ったのは本心だったのだろうか
彼以上に過去に囚われていたのは自分かもしれない
ただ彼だけは何処までも汚れなきようにと
――昴流君・・僕は・・・君を・・・・・・
最期のシーン、星ちゃんは昴流君の頬に触れてないと(いいなと)思う。
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