迷走



冷たい夜の空気に当たり、手を天にかざした。

「何が欲しい?」

問いかけに答えられなかった時にきっと見せた弱さが喪失と結びつく。

名前を呟いてもビルの屋上を通り過ぎる冷たい風にさらわれて。

此の風に乗って想いが届けば良いのにという、愚かしい幻想はきっと迷っているんだろう。

「何を表現したら、あんたに届いたと言える?」

呟きを祈りに代えても、風邪に阻まれて天には届かない。

喪失と、隅から崩れて逝く己の世界の中で。

一つ願うことを知った。

「あんたは思うようにすれば良いんだ。」

たとえ其の道に自分がいなくたって。

ただ自分が望むことは、二人別れた道が何時か、何時かもう一度でも。

交差すれば良い。



其の代わりに捧げるのが全てだったとしても。



静かに灯るのは街灯。

暗く沈むのは夜の街。

ただ奪っていくのは冷たい風。



泣いても誰も助けてくれないことなど誰よりも解っている。



プライドなど持たない方が良い。

大切なものを見誤るから。

誰か一人など好きにならなければ良かった。

風の冷たさが触れた温度を蘇らせるから。






「好きなんかじゃないよ。」

失った人など好きになっても苦しいだけ。






昨日も今日もきっと明日も。

何時も思うことがただ一人で、近付くことができなくて、其れでも好きだなんてきっとただの言い訳で。

言わばただ恋に近い自らの崩壊への停止装置。



其れでも手が届かない君が好きだと。



              


             
素敵・・・。もう、頂き物がレベル高くて小説書く気なくなります。(こら。)
                三条様、だいぶ昔に頂いたものをいきなり持ち出し、これ載せていい?
                とか言ってすいませんでした。わざわざ書き直してくださってありがとう
                ございます。このご恩は一生忘れません。実はもう一つ隠し持ってる気
                がするので、そちらもよろしくお願いします。(図々しい・・・)



                              
                      
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